ワインセラーによるオオクワガタの飼育

クワガタのブリーディングに限りませんが

より大きなサイズを目指すのに必要な条件は

● 大きな親(血統)

● 栄養価の高いエサ

● 最適な飼育環境

になります

これらのうち、国産オオクワガタについて、「大きな親」と「栄養価の高いエサ」に関しては

80mm以上といった、野生では見られないサイズの育成を可能にする、十分高品質なものを、昆虫ショップ等から容易に手に入れられるようになっており

多くのブリーダーの方が既に85mm以上の実績を残しています

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一方、『最適な飼育環境』については

ブリードしながら各々で模索していくことになりますが

育成のためにごく限られたスペースしか持たない私は、主に以下のアイテムを活用してます

● ワインセラー

● パネルヒーター

● 温調計

前向きな表現に言い換えると、これらの組み合わせのメリットとしては

小さな環境で飼育条件の模索ができるということです

小さくPDCAを回すということです

PDCAサイクル

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小さな環境であれば

かかる費用負担は少なく、仮に期待した結果がすぐに出なかったとしても

ブリーディングの継続に影響するモチベーションの低下や、ご家族からの圧力も小さくて済みます

また、ブリーディングを継続できれば、過去に得られた知見を次のブリーディングに活かせるため

最終的に目標のサイズの個体を得ることに繋がると思います

ワインセラーによるブリーディング

一部屋をまるごとブリードルームにする場合

エアコンで24時間、365日、室温をコントロールする必要があり、ランニングコストがかかります

ワインセラーにて(ここで紹介するものは正確にはワインクーラーと呼ぶようですが、ワインセラーとの呼び方が既に一般的になっているため、以降ワインセラーと呼びます)

例えば25℃程度で国産オオクワガタのブリーディングをする場合

これにかかる真夏(7、8月)の電気代は(ペルチェ式の場合)

真夏の電力量試算

100W/1000x(5分稼働x4回)/60分x24時間x31日x31円/kWh

約770円/月

※参照元:公益社団法人全国家庭電気製品 公正取引協議会のホームページ

ワインセラーの設定温度は最高でも22℃程度のため、

上記は温調計を用いてワインセラーを制御した場合の試算となります

これに対してエアコンの場合、

例えば6畳用であれば定格消費電力は約600Wなので

単純に上記「HINT」と同様の動作を仮定すると、電気代は約4,600/月となります

実際には、各部屋の断熱性や日当たりの状況、部屋の広さ、使われるエアコンの性能等の影響を受けるため、上記エアコンの電気代はあくまでも目安として捉えて下さい

ワインセラーの比較

ワインセラーに話を戻すと、その冷却方式には主にペルチェ式とコンプレッサー式があります

両者の特徴は、

● ペルチェ式:安価

● コンプレッサー式:高価、冷却性能が高い(5~8倍)、ランニングコストが安い(節電できる)

※参照元:さくら製作所のホームページ

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コンプレッサー式は、その高い冷却性能のため稼働時間が短くて済み、結果としてランニングコストが安くなります

ワインセラーで年間を通した国産オオクワガタをブリーディングする場合、

ワインセラーの稼働は夏場を中心に、最大でも半年程度ということと、冷却性能が5~8倍ということを考慮すれば

コンプレッサー式のランニングコストはペルチェ式よりも3,500円/年ほどお得

になる計算となります

私が使用しているルフィエール製のLW-D32(ペルチェ式、内容積75L)と、

内容積が同等のコンプレッサー式で低価格のルフィエール製のC32BDの

価格差を考慮すると、6年~7年ほどの使用で元が取れる計算となります

内容積75Lは、幼虫飼育用ボトルが800ccなら18本、1400ccなら12本入るサイズ

結局ペルチェ式とコンプレッサー式のどちらの選択がいいのかなぁ?

ちなみに、一部屋まるごとブリードルームとした場合でも、ワインセラーは部屋とは異なる温度設定ができるため

● 羽化ずれの調整(低温下で強制休眠)

● 別種(低温種等)のブリーディング

等にも活用できますので

数か月以上といった長期間20℃以下の低温でのブリーディングをするならコンプレッサー式

国産オオクワガタ等、22℃以上をベースとするブリーディングならペルチェ方式

がそれぞれコストパフォーマンスは良いと考えます

懐の事情から、そもそも私にはペルチェ式しか選択肢がありませんでしたが…

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繰り返しになりますが

ワインセラーの設定温度は最高でも22℃程度ですので

年間の多くを22℃以上の温度で管理するクワカブのブリーディングに使用するには

パネルヒーターと温調計も併せて必要になりますので注意してください

ルフィエール社製のワインセラーは、電源が入る際に『ピッ!!』という比較的大きな機械音が出ますので、温調計と組み合わせると夏場はこの機械音が頻繁に鳴るため、ご家族からのクレームの可能性があります

※ 本投稿内容について、用途外での利用になりますので、メーカーによる製品保証がなされない可能性があります。

※ 事故等生じないよう十分ご留意のうえ、自己責任にてご利用下さい。

※ 最後になりましたが、冷やし虫家(ひやしちゅうか)という昆虫専用の冷却庫もあります。

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パネルヒーターでワインセラーを温める

冬場のクワカブのブリーディングについて、

ワインセラーは最高でも22℃までの設定温度のため

国産オオクワガタ等のブリーディングに利用するには少し温度が低すぎます

ワインセラーの庫内を温めるためには、ヒーター等が追加で必要となりますが

爬虫類や小動物用のパネルヒーター(シートヒーター)が熱源として利用できます

パネルヒーターと言っても様々な製品があるため、以下表の私の実績を参考にされてください

定格消費電力室温からの昇温(+10℃程度)温度制御下での昇温(+1℃)
20W
10W
表 容量75Lのワインセラーの庫内加温(定性比較)

時間計測していないため、感覚的な比較となりますが、

冬場は、75Lの容量のワインセラーを室温から10℃ほど昇温させるのに、10Wのヒーターではかなり遅いイメージでしたが(設定温度に届くかな?と思いました)、

いったん設定温度(20℃前後)に達してしまえば、再昇温(+1℃)するのに、20Wとの差はあまり感じられませんでした

念のため、私が使用しているヒーターは以下になります

● 定格消費電力20W:GEX(ジェックス)社 レプタイルヒート M(爬虫類用)

● 定格消費電力10W:GEX(ジェックス)社 シートヒーターM(小動物用)

メーカーが同じで商品名も似ていますので、間違って購入しないよう注意して下さい!

ぶっちゃけると、同じものと思って2つ目をネット購入したら別物だったんですよ…

その他の注意点として、

ヒーターに最も近い段の菌糸ビンはヒーターの熱の影響を受けやすく、ビン底から菌糸が劣化するため

できるだけ直接熱が伝わらないよう距離をとったり、仕切りを入れたり工夫する必要があります

温調計(冷暖コントローラー)

ワインセラーとパネルヒーターの両方を同時にコントロールできる温調計として

水槽向けの冷暖コントローラーがあります

意図したわけではありませんが

私は使用している2台のワインセラーに異なる温調計を使用しているため

それらの比較を以下にご紹介します

メーカー型式特徴
(有)ニューマリンズNETC-3・温度差設定を0.0℃~9.0℃で調整可能
・維持温度から設定した温度差ずれが生じた際の、クーラー起動までのタイムラグを設定可能(クーラーガスがコンプレッサーに戻る時間を考慮した設定)
・実温とコントローラーの表示温度差を調整可能
・補修用でセンサー部の別売りがある
ゼンスイ(株)ZS-211・温度差設定は1℃で固定
・維持温度から1℃ずれると即クーラー/ヒーターが起動
表 温調計(冷暖コントローラー)の比較

ニューマリンズ社製のコントローラーの方が細かい設定が可能ですので

よりシビアな設定をしたい方や

コンプレッサー式のワインセラーを利用される方に適すると思います

設定温度と現状の温度の両方が表示されているニューマリンズ社製の方が私は好みです

Fig. ニューマリンズ社製のコントローラー
Fig. ゼンスイ社製のコントローラー

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飼育のポイント

クワガタに限った話ではありませんが、幼虫のブリーディング上の一番の管理ポイントは

温度コントロール

になると思います

冷たい空気は重く、温かい空気は軽いため、エアコンやヒーターを使用して飼育環境の温度を変化させる場合

場所による温度差が生じてしまいます

また、エアコンのファンやヒーターに近接する場所も、局所的に温度が異なってしまいます

これらへの対策としては、こまめに各箇所の温度をチェックしたうえで

  • 均熱にするためのファンの追加
  • 熱源からの影響を緩和するためのパーテーション

といった工夫をすることにより、狙いの温度に近い環境範囲が広がり

より大きなサイズが得られる確率が高まります

また、温度計、ワインセラー、あるいは温調計に表示される温度は、実際の温度との間にズレが生じている場合もあります

私の使用している75Lのワインセラーの場合、庫内の上段と下段で2~3℃の差が生じますので

上段と下段では幼虫の成長・成熟速度に差を生じてしまいます

どれくらい温度の影響があるのかなぁ?

実例の紹介

以下のファイルは、’21年度の私のブリーディングの実績になりますが

温度(段の位置)毎に、幼虫(♂)の成長速度(体重)に明確な差が出ました

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蛹体重と成虫サイズの関係

話は変わりますが

Nagi様が、Twitterにて能勢YGの蛹と成虫サイズ(オス)の関係

を記されてましたので

私のデータと比較したグラフを以下に示します

Fig. サナギ体重と成虫体長との相関

Nagi様の情報(オレンジの直線)との比較では、+/-1.5mmの範囲で相関のある結果が得られましたが

クワガタで1mmのサイズ差は大きいため、おおよその目安と捉えた方が良いですね

また、私のデータ(青のプロット)について線形近似式をとった場合、相関係数(R2)が0.9687と1.0に非常に近いことから、

サナギ体重と成虫体長の相関は高いということが言えます

つまり、サナギの体重が大きいほど成虫の体長は大きくなる

ということになります

’20年度より狙い温度を1℃低くしたことや、色々条件を振った実験をしたため、’21年度は想定よりも小さい成虫達になってしまいました…

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