国産オオクワガタの飼育・繁殖方法

これから国産オオクワガタの飼育を始める方向けに、飼育・繁殖(ブリーディング)に関する基本的な内容をご紹介します。

国産オオクワガタ

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種親(生体)の入手

産卵を目的とした種親(オス、メスのペア)を入手する際の注意点のまとめは以下となります。

  • 繁殖(ブリーディング)をするには越冬(前年羽化)した個体が必要
  • オス・メスの体長差が極端にならないよう気を付ける(目安:80mm以上のオスには50mm以上のメス)
  • 生体は、符節(足)、大アゴ、触覚、あごひげの欠損や麻痺がないものを選ぶ
  • インターネット販売等の場合は、販売者に関する情報や生体の写真、羽化日、幼虫時の記録等の詳細情報等で、信頼できる売り手かを見極める

羽化日の確認

国産オオクワガタの成虫は、羽化後成熟するのに半年ほどかかります。

また、野生では初夏(5、6月)から夏にかけて産卵します。

したがって、初夏に産卵をさせるためには、前年の秋から冬まで(前年中)に羽化した個体を使用する必要があります。

クワガタの生体は、昆虫ショップやネットオークション等で販売されますが、春から夏にかけて羽化シーズンとなるため、

販売される成体もこの時期に多くなりますので、ブリーディング(繁殖)を目的として成虫を購入する場合は、いつ羽化した生体であるかに気を付けてください。

オス・メスの体長差

オス・メスの体長に差がありすぎると、ペアリング(交尾)がうまくいかない場合やペアリング時にオス殺し、あるいはメス殺しをするケースがあるようです。

目安として、80mm以上のオスには、50mm以上のメスが、70~80mmのオスでは、45~50mmのメスが紹介されています。(参照元:「クワガタムシの飼育 徹底ガイドブック」、誠文堂新光社)

ペアで購入する場合は、販売側がある程度サイズを合わせて販売していると思いますので、それほど気にしなくてもよいとは思いますが、

オス、メスを別個に購入する際は、極端な体長差の組み合わせとならないよう気を付けてください。

私は85mmのオスに47mmのメスを掛け合わせたことがありますが、交尾や産卵に特に問題はありませんでした。

生体の状態確認

昆虫ショップであれば、直接生体を確認できるため、以下のポイントをしっかり確認したうえで購入して下さい。

  • 符節(足)、大アゴ、触覚、あごひげの欠損がない
  • 符節、大アゴに麻痺がない

特にメスについては、産卵木に卵を産むための穴を上手く掘れなくなるため、大アゴに欠損などないかよく確認してください。

ネットオークションやインターネット販売では、直接生体を確認することができないため、

販売者に関する情報や、掲示されている生体の写真、生体に関する詳細情報(羽化日、幼虫時の記録等)から、信頼できる売り手であるかを見極める必要があります。

産卵

産卵時の主なポイントは以下となります。

  • 産卵の際は、25℃前後の温度とするとオスとメスの比がおよそ1:1となる
  • 温度が高すぎても低すぎてもメスの比率が高くなる
  • ペアリングの成否は、メイトガードの確認、もしくはオス、メスが仲良く餌を食べている等の確認にて判断できる
  • 25℃前後の場合、産卵から約2週間で幼虫が孵化(ふか)する
  • 割り出しはキリなどを使い、てこの要領で産卵マークから少し離れた場所から表面を割いていく

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ペアリング(交尾)・産卵の時期

25℃位でオス・メスの数の比が1:1程度、24℃未満になるとメスの比率が高くなります。

エアコンなどで飼育環境の温度コントロールをしていなければ、安定して25℃以上の室温となる、6月以降まで待ってからペアリングを開始した方が、オス・メス比の偏りが少なくてすみます。

また、温度が高すぎてもメスの比率が高くなるようですので、8月の暑い時期の産卵も避けた方が良いかもしれません。

ペアリング(交尾)の期間

通常、クワガタは他の生体を傷つけないよう一頭ずつ個別の容器で飼育し、ペアリングの時のみ、オス、メスを同じ容器で管理し(同居させ)ます。

同居の期間は、3日から1週間程度が目安となります。

また、同居させる容器が大きいとオスとメスが出会う頻度、確率が下がり、

逆に容器が小さすぎると、ペアリングがうまくいかない時にメスの逃げ場がなく、オスがメスを殺してしまうなどの事故のリスクが高くなります。

私はペアリングの際に、幅:約120mm、長さ:約200mm、高さ約130mmの容器を使用し、マットを10~20mm敷いています

外国産のクワガタと比較して、国産オオクワガタは温厚な性質と言われますが、オスが興奮状態の際は、同居ペアリング時に事故が起こる場合があります。

オスのアゴしばり

絶対に事故を起こしたくない場合や、事故の心配なくペアリングしたい場合は、オスのアゴをしばることも選択肢のひとつとした方が良いかもしれません。

結束バンドを使用すると、比較的簡単にオスのアゴをしばることができます。

やり方としては、まず3本の結束バンドを準備します

次に2本のバンドで輪っかを2つ作ります。

残りのバンドを2つの輪っかに通して、3連の輪っかとします。

3本の結束バンドを準備
2本のバンドで輪っかを2つ作る
残りのバンドを2つの輪っかに通して、3連の輪っかを作る

両端の輪っかを一つずつ、オスのオオアゴの内歯と根本の間まで通し、それぞれ内歯で止まるくらいのサイズまでバンドを締めます。

真ん中の輪っかを締めていき、アゴ先が開かないところまで絞る。

最後に結束バンドの余った箇所を切れば完成です。

端の輪っかを内歯と根本の間まで通し、内歯で止まるくらいまでバンドを締める
もう一端の輪っかも同様に、反対のオオアゴの内歯と根本の間まで通し、内歯で止まるくらいまでバンドを締める
オオアゴの先端が閉じるくらいまで、中央の輪っかを絞る
結束バンドの余った箇所を切れば完成

中央の輪っかのストッパーが口先に来ると、餌を食べる際の障害となりますので、ストッパーの位置に気を付けましょう

ペアリング後、バンドを外す際は、オスを傷つけないよう気を付けながら、ニッパーなどでバンドを切りましょう。

ペアリング成否の判断

メスの上にオスが覆いかぶさり、メスを守っているような状態をメイトガードと呼びます。

しっかりとメイトガードしていることが確認できれば、ペアリングは成功しているものと判断できます。

また、メスがオスの動向を気にせずエサに集中している場合や、仲良く餌を食べているような場合も、ペアリングは成功していると考えられます。

逆に、メスがオスから離れて隠れている、あるいはオスが近づくと逃げる行動をとっているようであれば、まだペアリングは成立していないと考えられます。

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産卵セット

【シイタケホダ木】

クヌギ、コナラなどのシイタケ栽培に使われた後のホダ木(廃材)がクワガタの産卵木として販売されています。

硬すぎても柔らかすぎでも産卵木には向かないと言われますが、店頭に並んでいる商品(ホダ木)の硬さを爪で押して確認・比較するというのは、あまりお勧めできる行為ではないため、

芯ができるだけ小さいものや、黒い筋のなるべくないものを複数本選び、産卵セットに2、3本投入し、

クワガタに好きな木を選んで産んでもらうようにすると、産卵木が原因で産卵を失敗する確率を下げられます。

具体的な産卵セットの方法について、

販売されているホダ木は乾燥しているため、バケツ等に水を張り、重しを乗せてホダ木を水中に沈めて加水します。

加水の時間は人によりまちまちのようですが、数時間程度水道水に沈めておけば十分です。

加水後、スクレーパー等を使ってホダ木の樹皮を剥いだあと、余分な水分を陰干しにて除去します。

これは、メスが樹皮を取り除く余計な労力を払わないでいいように、という配慮から推奨されていますので、実際には樹皮を剥がなくても特に産卵上支障はないようです。

使用するケースに発酵マット等を敷き、上記した陰干し後の産卵木を2、3本セットします(容器がコバエシャッター(中)なら2本、コバエシャッター(大)なら3本入ります)。

基本的に国産オオクワガタは産卵木に産卵するため、下に敷くマットは何でもよいのですが、発酵マットを硬く押し固めて敷いた場合、マットに産卵するケースもあります。

一週間後のホダ木の産卵セットの様子

なお、発酵マットを敷いた場合、産卵後の穴を埋め戻す際に発酵マットが使われることが多く、産卵木と発酵マットの色の差で産卵マークを識別しやすくなるメリットがあります。

産卵マーク

マットの厚さは、産卵木の転がりを抑えるため、2、3cmの厚さを敷けば十分ですが、加水した産卵木でケース内が多湿の状態となり、アオカビが生えやすくなります。

これを軽減するため、産卵木が見えなくなるくらいマットを敷く場合もあります。

産卵セットにメスを投入後、1週間ほど経ったら産卵木の状況を確認します。

しっかりと交尾ができていれば、メスが産卵木をかじった痕(産卵マーク)が表面に確認できます。

メスが好まない木には産卵マークがあまり見られないため、別の産卵木と入れ替えた方が効率的かもしれません。

その際、交換した産卵木に、少ないとはいえ既にいくつか産卵していることが多いため、その場で産卵木から卵を取り出す(割り出す)か、産卵セットとは別に保存しておき、

他の産卵木の割り出しと併せて、割り出し作業をされて下さい。

【植菌材】

クヌギやコナラの生木やホダ木に、ヒラタケやカワラ、霊芝(マンネンタケ)等のきのこの菌を植菌した材のことです。

加水などの調整が不要で、購入後すぐに使えるというメリットがありますが、既にきのこの菌の繁殖が十分進んでいるため、

長期間使用せずに保存しておくと、柔らかくなりすぎて産卵材に適しなくなってしまいます。

また、シイタケホダ木は、安価でかつ、近所のペットショップなどでも容易に入手できるのに比べて、

植菌材は取り扱うショップが限られていることや、ホダ木よりも高価といった点がデメリットになります。

さらに、カワラ材や霊芝材はオオクワガタの幼虫のエサにはならないため、産卵もしくは孵化後すぐに割り出し、

発酵マットやヒラタケ等の菌糸ボトルへ移し替える必要がある点にも注意が必要です。

割り出し

大型の成虫を狙うのであれば、卵での割り出しを行う方がより早くから栄養価の高いエサを与えることができ、有利なのではないかと言われています。

有精卵であれば、産卵から約2週間で幼虫が孵化するので、2週間位を目途に割り出すとそのほとんどを卵で割り出せます。

割り出したオオクワガタの卵

なお、有精卵であれば採卵から徐々に膨らんでくるため、産卵から4、5日も経てば、卵が丸く、大きくなっていきますので、有精卵か無精卵かを判断できます。

さらに産卵間近になれば、幼虫の姿や大アゴが卵の内部でうっすらと確認できるようにもなります。

ちなみに卵で材割りをする場合、産卵木が固く割り出しが大変な場合がありますので、

キリなどの先端のとがった道具を使い、てこの要領で産卵痕から少し離れた場所から産卵木の表面を割いていくと、比較的安全に卵を割り出せます。

先の尖ったキリなどで割り出し
産卵マークから少し離れた位置にキリを刺しテコの原理で材の表面を木目に沿ってはがす
産卵マークの反対側からも同様にキリを刺し材表面を木目に沿ってはがすと…
卵が確認できた

また、材の内部をかじって産卵した場合は、かじった材で卵を埋め戻すため、産卵痕を目視で見分けるのは難しくなるため、かじった穴から少し離れた位置から材割りを進めていくと、比較的安全に卵を見つけられます。

かじった材で卵を埋め戻している

産卵材が硬いなどで、卵での割り出しが難しい場合は、産卵セットにメスを投入後、1ヵ月程度してから割り出しをすると、幼虫が産卵木を食べ進めたり、材の腐朽(ふきゅう)等により、割り出しが容易になります。

割り出した卵は乾燥に弱いため、水分を含ませたティッシュペーパーをプリンカップに敷き、

マチバリなどで空気穴をあけたフタをして、孵化(ふか:幼虫が卵からかえること)までそのまま置いておいても問題ありません。

また、孵化後、半日から1日位は複数の卵と一緒にしたままでも、ほかの卵を傷つけるようなことはないので、一日一回程度様子を確認し、

孵化していれば幼虫を発酵マットや菌糸ボトル・菌糸プリンカップに投入すればよいでしょう。

孵化直後の幼虫

また、卵のまま発酵マットや菌糸ボトルなどに直接投入してもよいのですが、

菌糸ボトルなどの場合、表面の皮膜に穴をあけ、そこに卵などを投入すると、きのこ菌が再発菌し、卵が菌に巻かれて★になることもあります。

したがって、あらかじめ表面にへこみ部を作っておき、きのこ菌が再発菌した(白い皮膜で覆われた)状態となってから、卵や孵化したての幼虫を投入すると、菌に巻かれる恐れがなくなります。

孵化直後の幼虫を菌糸プリンカップへ投入

孵化したての幼虫の場合、2、3日もすれば上記写真の状態から自力で内部へと潜って行きますので、そのまま見守ってください。

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幼虫飼育

甲虫に属するクワガタムシやカブトムシは、成虫に変態後、体が大きくなることはありません。

幼虫の間に摂取した食べ物の質・量、生育環境が、成虫のサイズを決める主な要因となります。

また、幼虫の飼育にあたっては、幼虫が互いを傷つけ合わないよう、基本的に一頭ずつ個別の容器に分けて飼育した方がよいでしょう。

幼虫飼育における主なポイントは以下となります。

  • ドルクス族に分類されるオオクワガタは、きのこの菌で腐朽(ふきゅう)した材をエサにする
  • 幼虫のエサに使用される腐朽のためのきのこ菌は、ヒラタケ、あるいはオオヒラタケが最もポピュラーだが、近年は低温飼育による超大型個体の実績により、カンタケが主流となりつつある
  • 菌糸は3ヶ月程度で劣化するため、菌糸ボトルはおよそ3ヶ月毎に交換すると良い
  • 1本目の菌糸ボトルは800cc、2本目以降はオスなら1400cc、メスなら800ccを使えば良い(20g未満の幼虫であれば、オスでも800ccのボトルで可)

菌糸ボトル・菌糸ブロック

菌類によって腐朽(ふきゅう)が進んだ腐朽材を食べるクワガタの幼虫は、共生微生物(酵母)によってその木材成分を消化しており(参照元:「クワガタムシの生物学」、(株)エヌ・ティー・エス発行)

クヌギやコナラ、ブナ等のオガに、きのこの菌糸(白色腐朽菌)を培養した、菌糸ボトル・菌糸ブロックが、主にドルクス族のクワガタ(オオクワガタ、ヒラタクワガタ等)の幼虫のエサとして適しており、各種販売されています。

菌類については、ヒラタケ、あるいはオオヒラタケ菌糸が最もポピュラーで、ペットショップやホームセンターなどでも販売されていますが、

最近は、SNS等を通じて低温飼育での超大型個体の実績報告が多数なされるにしたがって、カンタケ菌糸の利用者が増加し、主流となりつつあるようです。

菌糸は、プラスチック製のボトルに詰められた菌糸ブロックと、自分でボトルに詰める用として販売された菌糸ブロックがあり、後者の方が割安です。

販売元にもよりますが、菌糸ビン/菌糸ブロックには、ある程度添加剤が入っていますが、

飼育者の好みで、さらに、ふすま、麦芽、ビール酵母、トレハロース等を添加し、オリジナルの菌糸ボトルを作製できることも、菌糸ブロックの特徴と言えます。

菌糸ボトルの交換頻度

オオクワガタの幼虫は、孵化後の初令から2令、3令と脱皮を経て、ベースとなるサイズが大きくなります。

菌糸ボトルは3ヶ月程度で劣化するため、幼虫がエサを食いあげるタイミングが3ヶ月程度となるよう、新しい菌糸ボトルに交換していきます。

具体的には、1本目の菌糸ボトルは、初令、もしくは2令の小さな幼虫を投入するため、800ccを使えば十分です。

25℃前後の管理温度の場合、初令の幼虫は孵化(ふか)から20日前後で2令へと脱皮し、さらに25日前後で2令から3令へと脱皮しますので、2本目のボトルに交換する際(3ヶ月後)は、3令の幼虫での交換になるかと思います。

したがって、2本目以降のボトルは、菌糸の劣化と幼虫がエサを食いあげるタイミングが合うよう、オスであれば1400cc、メスであれば800ccが推奨されます。

20g未満の幼虫であれば、オスでも800ccのボトルで良いかもしれません

また、オオクワガタの幼虫期間はおよそ1年ですので、1頭あたりに使用するボトルは合計で3本、あるいは4本必要となります。

発酵マット

成虫のサイズにこだわらなければ、クワガタ幼虫用の発酵マットは、菌糸ボトルのような厳密な温度管理が必要なく、かつ費用が安価に抑えられます。

注意点としては、水分調整し飼育ボトルに詰めた後、再発酵によりガスを発生することがあるため、

1日程度ガス抜き(ニオイが収まるまで開放した状態を保つ)したうえで使用する必要があります。

水分量は、マットを手で固く握って形が崩れずかつ、水分がしたたらない程度が適量となります。

また、コバエが湧きやすいため、コバエの出入りを防ぐフタや、専用シートをフタと容器の間に挟む等の対策が必要になります。

フタを開ける際はコバエを室内に開放しないよう、室外で実施した方が良いでしょう。

発酵マットも菌糸ボトルと同様、3ヶ月程度で劣化しますので、3ヶ月毎にボトル交換すると良いです。

羽化(うか)

オオクワガタは、約一年の幼虫の期間を経過後、さらに約一ヵ月の蛹(サナギ)の期間を経て、成虫へと羽化します。

羽化の際の主なポイントは以下となります。

  • 幼虫からサナギになるには、冬場の温度(16、17℃程度)を経験させる必要がある
  • 冬場の温度から徐々に昇温していくと、23℃~24℃位で蛹室を作り、蛹化(ようか:サナギへと変態)する
  • 蛹室の作製後、1~2週間ほどで幼虫の足、アゴが機能しなくなる、前蛹(ぜんよう)と呼ばれる状態になる
  • 前蛹の状態からさらに一週間程度で蛹化する
  • サナギは、24-25℃で30日前後で成虫へと羽化する(メスは30日弱、オスは30+数日位)
  • 羽化後、1、2ヵ月の間はゆっくりと内部形成していくため(休眠期間)、エサは食べない

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蛹化(ようか)

オオクワガタは季節を感じる生き物であり、冬から春にかけての温度上昇でサナギになるスイッチが入ります。

夏場の温度帯にもよると思いますが、冬場の温度としては16-17℃程度を経験させると、昇温時にサナギに変態するスイッチが入りやすいようです。

冬場の温度を1-2週間経た後、幼虫の活動の様子を見ながら徐々に昇温していくと、23℃位から蛹室(ようしつ:サナギの部屋)を作り蛹化し始める個体が出てきますので、

暴れに気を付けながら、24℃あたりで温度を保持し様子を見ましょう。

菌糸ボトルの壁面に作成された蛹室

また、いったんサナギになってしまえば、ボトル内で暴れて大きく体重を落とす心配はありませんので、

24℃でも蛹室を作らない幼虫と共に、更に25℃位を限度に温度を上げて、再度様子を観察しましょう。

蛹室の製作から1~2週間ほどすると、幼虫の動きが鈍くなっていき、足、アゴが機能しなくなる前蛹(ぜんよう)と呼ばれる状態になります。

人口蛹室中の前蛹

前蛹の状態から、さらに一週間程度すると蛹化(ようか:サナギへと変態)します。

蛹化直後のサナギ

サナギは、24-25℃で30日前後(メスは30日弱、オスは30+数日位)の期間を経て成虫へと羽化します。

ちなみに、蛹化から羽化に至る過程については、蛹化から2週間ほどで目が黒くなり、羽化の4、5日前から頭部が茶色に色付きます。

また、羽化の1、2日前になると頭部の皮にシワが入ってきます。

羽化1日前のサナギの様子

サナギの内部から排水がなされ、お尻の先端の皮がシワシワになったら、羽化直前(1、2時間前)の合図です。

羽化直前のサナギ

人口蛹室

人口蛹室については、以下の投稿ブログをご参照ください。

国産オオクワガタに人口蛹室を利用する際の注意点 | クワブリはじめ (kuwaburihajime.com)

羽化後~後食まで

羽化直後に白かった上翅(じょうし)は、オレンジ色、赤紫、こげ茶(黒)と時間経過とともに色付いていきます。

ある程度色付いた後は、蛹室の中で体を回転させ、背中、側面、腹面を上に向け、数週間かけて徐々に体全体を乾燥(硬化)させながら、体の内部も形成していきます。

全身が黒色になり外骨格が硬化していても、体の内部は十分成熟していません。

羽化後、1、2ヵ月はゆっくりと体の内部が形成されていき、その間はまだエサを食べませんので(休眠期間))、本格的に活動開始するまであまり触ったりしない方が良いでしょう。

成虫の管理

成虫の管理における主なポイントは以下になります。

  • オオクワガタは羽化後、1、2ヶ月の休眠期間を経て、後食(こうしょく)を開始する
  • 幼虫と同様、互いを傷つけないよう、一匹ずつ個別の容器に入れて飼育管理した方が良い
  • 成虫管理のマットは、針葉樹マットを使用するとコバエ等が発生しにくい
  • 転んでも起き上がれるよう、障害物(転倒防止材)をいくつかマット上に置いておくと良い
  • 越冬させる際は乾燥に気を付け、10℃以下~氷点下以上の安定した環境下で管理する

羽化後初めて餌を食べることを後食(こうしょく)といい、羽化から1、2ヵ月以降にエサを食べるようになります。

後食以降、餌切れと乾燥に注意しながら、お互いを傷つけないよう、一匹ずつ個別の容器に入れて管理しましょう。

成虫を管理する際のマットは、針葉樹マットや小動物用の床材を使用すると、コバエやダニが発生しにくくなります。

餌や糞尿でマットなどが汚れてきたら、新しいものに替えましょう。

また、飼育中に仰向けにひっくり返ることがありますが、そのまま放置すると起き上がるために体力を消費し、最悪の場合★になることがあります。

転んだ際につかまって起き上がれるよう、障害物(転倒防止材)をマット上にいくつか置いておくと安心して飼育できます。

越冬(えっとう)

ドルクス(Dorcus)族に属するクワガタ(オオクワガタ、コクワガタ、ヒラタクワガタ等)の成虫は越冬することができ、羽化後2、3年程度は生きることができます。

15℃を下回るようになると活動が落ち、餌を食べずに隠れてじっと過ごすようになります。

冬の時期は乾燥が原因で★になることがあるため、乾燥対策として、加水したマットの量を容器の半分かそれ以上敷き、

週に1回程度マット表面が乾燥していないか確認するようにすると良いでしょう(乾燥している場合は、表面を霧吹きで加水します)。

冬の間は10℃以下でかつ、氷点下を下回らない程度の安定した環境となるような場所に置きましょう(例えば日の当たらない下駄箱や玄関等)。

温度変化を抑えるため、飼育ケースを段ボール箱に入れるなどの工夫をすると良いです。

春が近づくと、日によって15℃を上回る日が出てきます。

その際に餌を食べることがあるので、暖かくなり始めたら餌を投入し、週に一回程度交換しておくと良いでしょう。

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